Air Graphics
2018.2.15 | デザインネタ

グラフィックデザイナーがやっている、気づかれにくく手間のかかる地味な作業1

Adobe Illustratorがあれば誰でも原稿が作れる時代、普通に入力すれば普通に出力される。 けれどもぼくらの仕事は、それだけで終わらせてはいけないことになっている。ディテールにも気を配るからこそプロのお仕事という、プライドのようなものがあるからだ。

その気配りのひとつであり、地味で手間のかかる細かい作業に、文字サイズの調整がある。

具体的な例はこちら。たとえばこのサイン。動く歩道の終端を掲示して注意喚起を図るものだ。

調整前の画像

一般の人は気にしないし、これを施工したサイン屋さんも気にしていないから存在している看板なのだけれど、ぼくには気になって仕方がない部分がある。だからこんなふうに調整した原稿データを納品する。

イラストレータで調整した例

「5が弱いし、宙に浮いている」という印象を受けるので、「5」を少し拡大して、下方向へ移動させれば次の画像のようになる。ぼくはこれぐらいの見え方が好きだ。

調整後の画像

重要なことは「5メートル」という具体的な距離を伝えること。だから肝心の「5」で引っかかってはいけない。そんなふうに考え文字サイズを調整している。

別の例も見てみよう。これはビルの階数表示だ。

調整前の画像

2つの文字の高さを比較すると、1は低くFが高い。「正しい」とか「間違い」という話ではなく「そういう書体」として作られている。大文字・小文字・数字が混在する文章で使ったとき「最も良い感じだ」と書体制作者が考えたバランスになっている。つまり、各文字のバランスは書体によって異なるということだ。

試しにいくつかの書体で「1F」を出してみたら、結構な割合で高さが異なっていることに気づかれると思う。

1Fの例

入力したデータのまま掲示サイズまで拡大したサインだから、間違ってはいないけれども「ちょっと納まりが悪い気がするなぁ」なんてことを感じる。たぶんぼくがこのサイン用データを依頼されたとしたら、「1」を大きくして「F」の高さに揃えたデータを納品する。たとえば次の画像のように。

調整後の画像

たった2文字しかないサインでは、ほんの少しの差が違和感につながると考えるからだ。また、階数を表す数字が主、Fは従という構造が揺らぐのは良くない。(とぼくは思う。極論を言えば「この場合Fって必要?」となるのだが、要求が数字+Fであれば、それに応えることになる)

情報としては何一つ間違っていないし、調整しなくても困らないことだ。しかし、そのように教育を受けるのがグラフィックデザイナーで、調整しないとだんだん気持ち悪くなっていく生き物なのだから仕方がない。

文字数が少ないものほどデフォルトのサイズ違いによって悪い目立ち方をすることがある。デザイン勉強中の方には、こういう部分にも注目してほしいと思う。微細な調整が仕上がりの差につながるので、ぜひお試しいただきたい。