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2016.12.25 | デザイナー四方山話

伝わるはず、がちっとも伝わっていなかったかもしれない問題。

肥後橋で自転車とともに佇む女性に道を尋ねられた。

「大阪会館ってどこですか?」

大阪会館?

はて、なんだっけ?

どこかで聞いたことあるし、行ったことがあるような気もするし、だけど出てこない、どこにでもありそうな施設名。

「ここなんですけど」

と見せられたスマホ。

スマホ…。

えーと……検..さ、いえなんでもありません。この人にそんな技能があるなら、街でわざわざ場所を尋ねたりしない。

画面には北御堂が表示されていた。大阪会館、ああ、わかった。ファミリーセールとかで使われるホールだ。

これは本町。もしかして本町をご存知ない?

自転車で移動しているくらいだから、大阪市内で生活なり仕事なりをされているに違いない。本町の位置関係くらいは把握しているだろうと思う。

「ああ、これはあっちの方ですわ」

と、およそ南東を指差してみたところ、

「ええ!?」

いかん。この世の終わりみたいな顔をされてしまった。ここはもう少し柔らかく。

「ここからあそこに見えてる御堂筋まで出て、右に曲がって本町まで行ったら……」

「ええ!?」

この世の終わりみたいな顔をされても、リターンズ。

なかなか手強いぞ、この人。

ここで説明しきれなかったら、現地まで連れて行けとか言われてしまいそうな勢いだ。ちょっと本気でなんとかしないと。

「まず、あちらに向かって走ります」

体を東側に向け、両手も前に差し出して、前にならえって感じでジェスチャー。

「大きな道、あそこの道ですけれど、大きな道にぶつかったら右へ」

「右って?」

ああ、言葉ではダメな人だ。「まっすぐ行って、大きな道で右に曲がって、5分ほど走る」の3ステップは頭に入らない人なのだ。

「こっち方向に」

と、ぐいっと90度回転。両手は再び、前にならえ。

「そうしたら右側にバカほどデカい寺みたいな建物が出てきます。そこです」

と、ここまで丁寧に説明してようやくこの世の終わり顔が解けた。

実に衝撃的なワンシーンだった。

常識だと思ってることが、その人にとってはそうじゃなかったこと。

スマートフォンを持っていてもマップと連動できない人がいること。

僕らが伝わるだろうと思っている言葉がまったく伝わっていなかったこと。実際「まっすぐ行って、右に曲がる」が伝わらないってのは、かなりの恐怖だ。ほんの2stepのことなのに、たったひとつの単語「右」すら伝わらないのだ。

僕らは「これなら伝わるだろう」「これはわからなくてもいいだろう」を織り交ぜて仕事をしている。

それがまったく伝わっていないっていうのは、もしかしたら自分たちが使っている言葉でクレームを産む。本当に困った時代になったものだ。レアケース中のレアってことはわかっているのだけど、体験してしまった衝撃は大きい。

デジタルディバイドって言葉があったけれど、この谷の深さと幅についてとても悩む日々がもう目の前に来てしまっていた。

もう今までみたいな作り方ではヤバいのかもしれない、と思い始めている。