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2019.2.7 | 食べ物ネタ

身動きが取れないデザイナーこそやるべき料理があるとしたら

デザイナーは、動かない。

なんかちっとも仕事してないような表現に読めるけれども「はたらかない」ではなく「うごかない」。要するに椅子に座っている時間がすごく長い。

もうこれが実にもどかしい。

特にウェブの作業が入ったら手間が多くなって身動きが取れなくなって、メシもフロも時短になりがち。なんにもできないぜベイベー。

それで追い込まれると考えるのをやめたくなる期間というのがあって、ぼくはそれにハマる傾向がとても強い。そうなってしまったら仕事のための発想力すらスリープモードに突入してしまう。

そうなったら寝たらええねん。......とは言えず。

そんなぼくにぴったりの方法があった

つまり、何も考えなくてよくて、時間的拘束にも対応できて、美味しくて、楽しいものがあればいいということだ。

そこで思い出したのが真空低温調理。

時間をかけてじわじわと温め続け、アミノ酸を変性させて旨味を引き出す調理法だ。言うなれば、ほったらかし調理法。

長時間拘束される人にはもってこい。

目が届くところで勝手に調理が進むということで、

  • 事故の不安は軽減される
  • カンタン
  • 美味しい
  • 失敗しない
  • 工夫すればするほど楽しい

もうぼくのためにあると言わずしておられようか。美味しいものが待ってるとわかっていれば、仕事も楽しくなるってものだ。ふふふ。

ちなみになんで「真空」かというと、袋に入れた肉をお湯に入れて調理するのだけれど、その時に空気を抜きながら投入するから。腐敗や酸化を避けるためには空気がない方がいいので、理にかなっていると思う。

低温調理のキモは3つ

低温調理には大切なポイントが3つある。いや、それ以外にもあるかもしれないけれど。

  1. 温度を上げすぎないこと。その理由は、不味くなるから。
  2. 温度を下げすぎないこと。その理由は、食中毒になるから。
  3. そして、ちゃんと安全性を担保すること。

とにかく最後のが重要で、いつどのように殺菌するか、火事を起こさないためにどう気をつけるか、などをまとめておく必要がある。

これについては頭を使わなくていいように、まず最初にガッと火を入れる、暑い時期はやらない、寝落ちしない……てなことを叩き込んでおけばいいはず。難しくない。

まずは下ごしらえする

長い前置きはここらへんにしておいて、真空低温調理スタート。

いつもは豚肉でやる。ただし、お花見などのイベントで出す時に限る。

価格的にもカロリー的にも、しょっちゅうできるわけじゃない。だから普段やるなら鶏の胸肉がベストだと思う。

そんなわけで、スーパーマーケットで鶏の胸肉を買い求めた。

鶏肉の画像

100g 68円(税別)......なのだけれど、
48円になる日もあるらしい。注視すべし。

これに塩をまぶす。

基準がよくわからないながらも、今回は重量比2〜3%の塩を使ってみる。

2つで515gの鶏肉に14gの塩。ざっくり2.7%。

すごくアバウトな分量だけれど、このキッチンスケールの精度がどれくらいのものかはわからないので、あくまでも数値は目安として使う。

ハーブを沢山使うならもっと塩は減らせるし、食事のメニューなら1%でいいという話もある。ただ、あまり減らしすぎると保存に向かないので注意が必要だと思う。

計量中の塩の画像

実際に測ってみると、14gの塩ってものすごく多い。
こんなに入れんの? って感じ。

さらに胡椒をまんべんなくまぶす。

ハーブも入れたいところだけれど、忘れてきてしまった。次は入れておきたい。

塩胡椒した肉の画像

胡椒はしっかりまぶす。
酒のアテには胡椒でしょう。

肉隗はふたつあるので、ひとつは風味を変える。

味変要員として動員したのは、クミンパウダー。これで中央アジア風味になるはず。

クミンの画像

カレー作るために買ってあったクミン。
万能のスパイス。

クミンについては間違えようがないので、たっぷりまぶす。カレーみたいに油で炒めてからまぶすと、香りが立ってもっといいかもしれない。そこまで仕事場でやるつもりはないけれど。

あるいはガラムマサラもアリかも。

クミンも使った肉の画像

クミンは多く使っても大丈夫。

いよいよ低温調理

わりとしっかり目にまぶして、ジップロックに入れる。250g程度の胸肉なら「フリーザーパックM」に1枚の肉が入れられる。

仕事場に持ち込んだカセットコンロにパスタ鍋を載せ、たっぷり水を入れて沸かす。ウチの鍋で5Lくらい入る。

水は多い方が温度変化が少なくていい。特に冬場は冷めやすいので、少しでも気温の影響を抑えて緩やかに冷えるようにしたい。

沸騰したお湯の画像

殺菌も考えると、一度沸騰させるのがいいと思う。
とりあえずお鍋と水を殺菌。

お湯が沸騰したらガス火を止めて、少し時間をおく。温度計があれば95℃くらいまで待つ。

その理由はジップロックの耐熱温度。

ジップロック(フリーザーパック)の耐熱温度は100℃なので、お湯の温度が高すぎるとジップロックにダメージを与える可能性がある。実際、過去に一度ピンホールを開けてしまったこともあり、耐熱温度には注意を払っておきたい。(※1)

ジップロックは密閉せず、火傷に注意しながらゆっくりとお湯に沈めていく。水圧で袋の空気を押し出し、真空に近い状況を作り出すのだ。

ストローがあれば袋に差し込んで中の空気を吸い出しながら密閉すると、より真空に近くなる。これによって腐敗や酸化に必要な空気を排除することができる。

鍋を電熱コンロに移し替えて、サーモスタットを作動させる。

サーモスタットの画像

サーモスタット、オン。

鶏肉の場合には最低温度を55℃に設定する。55℃で1時間温め続ければ、鶏肉の菌、つまりカンピロバクターとサルモネラを死滅させることができるらしい。(特定加熱食肉製品の加熱時間を参照のこと)

Amazonで購入したサーモスタットを、54.5℃でOn、56℃でOffにするよう設定した。56℃でOffになってもコンロの余熱で湯温が上がる。実際は57℃くらいになっているんじゃないかと思う。

55℃で温めるなら95℃まで温度を上げる必要はないと思われるかもしれないが、一度は75℃以上にする必要がある。75℃で1分以上温めると肉表面の滅菌が見込めるからだ。

塊肉の特徴として菌は表面や切断面に着いて繁殖すると言われる。だから最初にその部分の菌を殺しておくと、繁殖させることなく低温で長時間調理することができる、という理屈らしい。

生レバーが問題になったことがあったが、牛のレバーにはO157という危険性に加えて「内側にも空気に触れるところ」がたくさんある。そのため、目に見える部分だけを加熱しても菌が繁殖するおそれを排除できない。手が届かない「表面」はどうしようもないので、中心部までしっかり加熱しなければ危険なのだ。スライス肉やハンバーグも同様の危険性をはらんでいる(表面だらけ)ので、処理には慎重を期したい。

その点、塊肉はとてもわかりやすい。見たまんまの「表面」を一度ガッと加熱してやればよいのだから、考える要素は皆無だ。実にシンプルでイイ。

鶏肉の画像

ほったらかし調理、完了〜。

そんなこんなで7時間じっくり温めた鶏肉ができあがった。できたての低温調理肉はとても美味い。

冷えたものもいいのだけれど、食べる際はスライスしたものを電子レンジでちょっと温めると美味さが引き立つ。他人に食べさせたり、店で出したりするわけではないので、そこらへんはアバウトに楽しむ。

ちなみに、低温調理で参考にしているサイトがこちら。

エンジニアのメソッド https://engryouri.net

美味い理由とリスクについてしっかり書かれていて、とてもいい。

  1. ジップロック(フリーザーパック)じゃない密閉袋、例えばスーパーマーケットのプライベートブランドのパックには、耐熱温度がさらに低いものがある。たとえば耐熱温度70℃というものがあったりするのだが、これは75℃で1分以上加熱するという殺菌方法に合わないので使わない。

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